狩猟生活を送っていた縄文人の後、農耕文化が広まり三内丸山遺跡や吉野ヶ里遺跡に見られるような集団生活を送るようになる。大陸から鉄器や馬が伝来し、広い範囲を移動することが可能となり、武器としての鉄器で抗争が激しくなる。魏志倭人伝にも当時の日本の状況が描かれているが、卑弥呼すなわち天照大神によって日本は統一へ向かい大和朝廷につながるわけであるが、各地は相変わらず豪族が土地や人民を支配し、貢物を朝廷に献上する主従関係だったと思われる。6世紀以前はこういう状態だったと思われる。
飛鳥時代に聖徳太子が大化改新を行い、律令制度が整い、地方の支配が強まっていく中で、天皇の側近としての藤原鎌足が権力を強めていく。
奈良時代になると、荘園制度が始まり、藤原一族は全国に荘園を持っていたようである。その名残が日本人の名字にも残っている。佐渡の藤原氏は佐藤、近江の藤原氏は近藤、伊勢の藤原氏は伊藤など藤のつく苗字は全国各地に存在する。各地に氏神信仰が残っているが、これは藤原[氏]を祀ったものである。氏神信仰は沖縄にはない。
さて弘法大師は平安時代に生まれているが、四国で修業をしたとされているが、当時の四国は氏神様を祀る時代にすでになっていたと思われる。今でも氏神信仰は農村部で残っているが。
平安時代の藤原道長により藤原一族のクライマックスを迎えるわけであるが、平安時代末期になると平家や源氏の武士が台頭し、奥州を支配して中尊寺の金色堂を作って隆盛を極めていた藤原氏は源氏に攻め込まれ滅びてしまう。
実に藤原鎌足から数えると400年以上日本の地域を藤原氏は支配していたということになる。300年の徳川家以上にわたって日本に君臨していたことになる。
ちなみに中尊寺は天台宗であるが、
藤原道長は高野山に詣でて、自らお寺を作るような信心家であった。
妻はスパイだった5
翌朝、黒山は4人の放射線作業従事者と事務員のアケミから昼休みの聞き取りを行う。2人の男は食事前に連れ立ってトイレで用を足し残りの2人は午後の仕事前に連れ立ってトイレに行ったという。アケミは食後30分してトイレに立ったという。すぐに戻ってきたと4人は証言した。
黒山は本日の捜索チームに社屋周辺を捜索するように依頼した。
1時間ほどして、浄化槽から高い線量の放射線が出ていることがわかり、3時間後に屎尿にまみれた線源が発見された。
若本は自分が誤ってトイレで落とし水に流してしまったと主張し、そのように始末書を書いた。
「よかったわね、見つかって」と妻は夕食を食べながら言った。
「実害はなく、なんとなく丸く収まったけれど、これでよかったのかな」と黒山。
「そうね、誰にも迷惑がかからないのなら追い詰めない方がいいこともたくさんあるからね。若本さん、近々、結婚するって言ってなかった?」
「そう、今回の事件でとんだケチがついてしまったけど」
「男女の問題はいろいろあるからね」
「男女の問題?」と答えながら黒山は、あっ、そうかもと思い当たる。
昨日、駐車場でアケミが黒山を出迎えたのは、何か打ち明けたいことがあったのかもしれないなと思えた。
しかしもう片付いたことだ。これ以上の詮索はしないことにしよう。
平穏な日々が続く。嵐の前の静けさでなければいいのだが。
吸収合併された会社で、首を傾げるような配置転換に展望を見いだせなかった日々のことを思うと、必要とされている手応えを感じる現職はとてもありがたい。次々と噴出する出来事に戸惑いながらもなんとか処理して、ただただ新職場に順応しようと突っ走ってきた数ヶ月であった。
朝食を食べている時に、プラント周辺の計測はやっているの、と妻が聞く。
「ああ、定期的にやっているよ。排水溝や地下水、海などきちんと監視している」
「異常はないの?」
「大丈夫だよ、ほとんど変動していない」
「もし、異常値が出たらどうするの?」
「プラント運営企業が速やかに関係自治体に通告することになっていると思うよ。プラント建設の時に地方自治体とデータ公開の契約を交わしていると思うけど」
「そうなの」
今日の妻はいつもと違う。何か兆候をつかんでいるような、どこからか情報を得ているような雰囲気だ。前にもこんなことがあったような気がする。タンクから汚染水が漏れてないのかな、と妻がつぶやいていたと思ったら、1週間後にその事実が明るみに出た。
「所長、ちょっとご相談があるのですが、よろしいですか」
黒山はパソコン持参で所長室のドアをノックする。応接テーブルの上にパソコンを置き、開いた画面を所長に向ける。
「これをご覧ください、プラントの排水溝の線量のグラフなんですが上昇傾向にあるように思うのですがいかがでしょうか。ここ3ヶ月の間にじわりじわりと上昇しているのです。1リットルあたり40ベクレルだったのがほぼ2倍の80ベクレル近辺まできています」
あまりにゆっくりであるために気に留めていなかったが、今朝の妻の一言で気になりだした。
「確かにそうだな」と研究畑を歩いてきた所長はデータに率直に反応する。「変動幅は小さいが、何かの原因があって上昇していると考える方が妥当だろう。プラント運営企業の方に報告しよう。早急に報告書をまとめてくれ」
「了解しました」
梅雨に入り、排水溝の線量はさらに上昇し始めた。この1ヶ月でさらに倍の160ベクレルまで到達した。地下水の線量はやや下がり気味で、海水の線量は一時的に上昇することもあるが、おおむね横ばいが続く。
所長室を訪問し、データを示す。前回提出した報告書の返事はまだないという。
「これだけ上昇するということはどこかから漏れているということではないのでしょうか」と黒山が言うと、
「私も客観的に見て、君の意見と同じだ。どこかに流出源があると考えた方がいいと思う。黒山くん、もう一度報告書を作成してくれ、私の意見も添えて提出するから」
1週間後、800ベクレルまで上昇した。排水溝でこれだけ線量が上がれば、それだけ汚染水が海洋に流出しているということだ。
「黒山くん、これが元請けからの返事だ」と所長は書類を見せた。『タンクや配管からの汚染水漏れは確認できなかった。汚染水がどこから排水溝に流れ込んだのか調べているが、まだわからない。引き続き、計測と報告を依頼する』
「流出源がわからなくても、なんらかの対処が必要に思うのですが。排出弁を閉じて排水を止めるとか、このままだと垂れ流しですよ」
「君の言っていることはよくわかる。ただ、我々の業務は下請けの測量業務だから、元請けに対策を命令することはできないのだよ。元請けがすべて独自に判断することだ」
「だけど、垂れ流しだと海が汚染されて漁業関係者が被害を被ることになります」
「その通りだ。そこで私としては港湾内の計測ポイントをもう少し増やしてみようかと思うのだが。3ヶ所か4ヶ所くらいにしてデータを示せば、インパクトが強くなるように思うのだが」
「わかりました」
「それでは計測ポイントを策定してくれ」

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